呉服屋が本気で選んだ雛人形☆衣装・柄・職人の技、妥協なきこだわり

日本文化であそぼ

昨年、娘に女の子が生まれて、お雛様を買いに行きました。

選ぶ条件は男雛と女雛だけ、昔からの優しい顔、伝統柄の衣装、

呉服屋ですからねー、そこは少々こだわりたいと見て歩きました。

 

 

実際に見に行くと、段飾りなんてほとんど置いてなかったです。

どこのお店でも親王飾り(内裏様だけ)でした。そういう時代なんですね。

嵩張らないためでしょう。そういう私たちも親王飾りで探していました。

 

 

雛人形を見て歩いて、とっても驚いたことが2つありました。

まず1つ、

お雛様を見に行ったら女雛(めびな)の後ろ側に長く垂れている白い布、「裳(も)」と言いますが、そこに作家さんの名前と落款が押してあったんです。

 

ブルーの部分に作家さんの名前と落款(印鑑)がありました

 

「作家さんの名前を書くようになったのはいつ頃からですか?」と聞くと

「昭和50年代、バブルの頃からです。かなり色々なお雛様が売られて、自分のところのお雛様には責任を持つ意味で書くようになりました」

 

 

やっぱり!と思いました。

バブルの頃といえば、着物業界でも同じようなことが起こっていました。

例えば鹿児島県で作られている大島紬の偽物が大量に出回りました。韓国で大量生産したのです。技術も違いますが、大きく違うのは気候風土です。高温多湿、温暖な鹿児島県と、乾燥し温度差が激しい韓国とではどうしようもない違いがあります。

本場の大島紬がしっとり柔らかいのに比べて、韓国大島は生地が硬くパサっとしていました。紺色の藍大島は明らかに色の深みがなかったです。

 

織り出しに本場大島の名前を、鹿児島の検査場が旗印、奄美大島が地球印です。

 

そこで偽物と区別するために、大島紬の組合では、着物の織り出し、一番先に「本場大島紬」の文字を柄のようにして織り込み、組合の証紙を貼り、割印や打ち抜き印でその証紙を張り替えられないようにまでしました。

人形業界でも同じことが起こっていたんです。

 

 

2つ目、

作家さんと言うのは衣装を着せる技術の人を指し、顔は頭師(かしらし)さんが別の工房で作っていらっしゃるそうです。高額なものは首が抜けるようになっていて、差し込む棒に名前が書いてあるものもありました。

お人形全体を一人の作家さんが作られていると勝手に思い込んでいたので首が別で、差し替えられる事にびっくりしました。

 

 

お人形を決めるとき、まず、選んだのは 男雛の衣装の色です。

実は今、成人式でも振袖の色の流行は「くすみカラー」です。

最近のお雛様の半分以上がこの白っぽいグレーに落ち着いた「くすみカラー」だったのです。

呉服屋としては伝統に拘りたい!

 

男雛の衣装は黄櫨染

 

男雛の衣装は 天皇陛下が即位礼や大嘗祭など最も大切な儀式で着用される色 黄櫨染(こうろぜん)にしたいと思っていました。

太陽が南の空に位置して、最も勢いをました黄褐色(茶色系)です。天照大神(あまてらすおおみかみ)から受け継がれた光の色だと言われています。

平安時代以降、一千年以上も、天皇のみが着用を許された「禁色(きんじき)」と言われています。

 

 

そして織柄も「桐竹鳳凰」

鳳凰は、泰平の世を治めた君主にだけ、天上から舞い降りるとされる中国の伝説上の鳥です。桐の木を住処とし、竹の実を食べる、この3つが組み合わされた最高の吉祥文様と言われ、皇室の衣服や調度品にも多く用いられています。

 

 

紋屋井関さんは毎年当店主催の京都での展示会「京裳苑」に出品していただいています。

 

西陣にある「紋屋井関」さんがこの「桐竹鳳凰」の柄を470年以上にも亘って使っていらっしゃいます。

室町時代に御寮織司(ごりょうおりつかさ)に任命された日本最古の機屋さんです。 宮廷や大名の装束制作を独占的に担ってきた歴史があります。

高度な技術を持った職人さんしかできないので、年間に作られる帯や着物の量も限られています。従ってお取引ができる呉服屋も全国でかなり限定されています。

 

今年も京裳苑5月29日から31日、みやこメッセでの展示会にも出展していただきます。

男雛の衣装も色も柄も思っていた理想通りで嬉しかったです。

 

 

このお店ではさらに、

「衣装の縫い目でも柄をきちんと合わせています」

 

 

衣装の縫い目でもきちんと柄が合わせてあります。

 

 

 

何と、前見頃の合わせ目も、袖付もきちんと柄が合わせて縫ってありました。

当店が着物を裁断する時と同じことを思ってやっているので、意気投合して盛り上がりました。

細部まで気遣いして作っていらっしゃる作り手さんと知り合えて幸せな気持ちになりました。

 

 

女雛の衣装もそれに合わせて伝統的な「有職文様(ゆうそくもんよう)」十二単に使われる拡張高い柄で、王道の赤を選びました。

お雛様選びで感動したのは、私たちが思いもしなかったこと、自分たちの知識を超えるプロのアドバイスをしてくださったことです。

 

 

例えば、

お人形の中身が普通は藁だけど、桐の木を使っている、だからシケたりカビが生えにくいこと

お人形の指の中には針金が入れてあるから折れにくいこと、

最後には爪まで描かれてある手を提案してくださいました。小さな手の先の爪まで描けるのは全国でもたった一人しか職人さんがいないのだそうです。

次々と他にも教えていただき、本当に納得! 本当に、素晴らしい買い物体験でした。

 

 

お店の人とお話ししているうちに3時間半も経っていました。

一生もの、ずっと残るものは

ただ物が手に入ればいい、安ければいい、とは思えません。

買った時のプロセスって大切ですよね。その日の出来事は絶対に忘れません。いい人と知り合えた幸せを感じました。

きっと今後も、お雛様を見るたびに温かい気持ちになるでしょう。

 

 

着物でも同じでしょう。私たちもお客様が買われるプロセスを絶対に大切にしたい、お客様が考えていらっしゃる以上の提案ができるプロでありたいと思いました。

着物選びで信頼され、幸せを提供したいと改めて気を引き締めました。

 

伝統に則って「左が上位」男雛の右側に女雛を飾りました。

 

無事、初節句に間に合わせていただけて、お雛様をお迎えできました。

飾り方は関西式、平安時代からの伝統で飾りました。

そのお話はまた次に。

 

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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