衣替え、今と江戸時代のきもの事情☆昔の女性は忙しかった!
「9月の月初はまだ薄物かなぁ?」毎月、月初めは京都の問屋さんが一斉に展示会をされるので仕入れに行きます。9月からは単の着物に変えるのですが、真夏の暑さが続く中では単をきる気がしません。着物は季節より早めに変えるのはいいのですが、前の季節を引きずることは野暮とされています。それでもこれほど暑かったら、ルールよりも気候を優先すべきだと思います。
ところで現代の着物はおおよそ薄物・単・袷(裏付)の3種類ですが、江戸時代は単・袷・綿入れでした。徒然草で兼好法師が書いているように、日本の住居は「夏を旨とすべし」夏向きに作って、寒い時は着物を着込めばいいという法則がありました。
8月に続編が出る高田郁さんの小説「商い正傳 金と銀」楽しみにしていました。コロナの影響でしょうか?9月にずれ込んで残念です。
江戸時代を舞台に、貧しい家に生まれた主人公「幸」が大阪の呉服屋へ奉公に出てやがて当主となり知恵を働かせて江戸へ進出、困難を乗り越えて店を繁盛させていく物語です。小説としても面白く、経営のヒントにもなります。呉服屋の私が読んでも着物やその作り方も丁寧な描写がされていてハマっています。
その中で描かれている庶民の生活は決して裕福なものではありませんでした。呉服屋で新しい反物を誂えて着るなんて夢でした。お金を貯めてようやく子供のために半反(大人の着物の半分)を買うのがやっとでした。古着がいっぱい吊られて売っている市場があってそこで買っていたのです。
季節の変わり目は大変でした。家事の合間や夜なべに袷の着物を解き、単に仕立て直して着たのです。それも家族全員分と思うと、女性の忙しさは想像しただけでもぞっとします。
同じ着物を仕立て直して単にしたり袷にしたり、さらには綿を入れたりして着まわしたからこそ今のような透ける素材の薄物はなかったのですね。
女性の忙しさを思うとき、今生まれてきた幸せを感じます。
山兵、京都さろんで
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