お地蔵さんも畳のヘリもみな「結界」ってどういうこと?

京都さんぽ

安倍晴明ら陰陽師が都を守るために張っていた「結界」は一条戻橋や女人禁制だけではありません。

 

「結界」はあちらとこちらを分ける区切り、境界です。境界線はあちら側でもこちら側でもない曖昧で不安定な場とされ、危ういものと恐れられました。このような境界を重視する考え方は日本だけではなく世界に共通するものです。

 

身近な例では橋のたもとや村のはずれなどにお地蔵様が祀られているのも結界の危うさから守られたいと思いからだったのです。

私がいる中京区では町内ごとにお地蔵様が祀られていて、100メートルも歩けば小さな祠があります。私は当たり前のように思っていましたが、友人と着物を着て歩いていた時にその多さを指摘され、「そういえば・・・」最近気づいたうっかりさでした。

 

 

 

日本の伝統芸能では、お稽古を始める前に扇子を自分の前に置いてお辞儀をします。扇子で相手との境界線「結界」を設けた作法は、室町時代に僧侶や公家の間で始まりました。

 

茶道では刀も身につけず、このような狭い口を通って茶室へ入ります。(茶室を学ぶより)

 

茶室への入り口「にじり口」も聖なる茶室と日常空間を区切る結界です。にじり口を通ることで中へは身分の違いや日常を持ち込まず、茶室内では平等だとしたのです。軸や道具を拝見するときも扇子を前に置いて結界を作りました。

 

落語で、噺家さんが高座に上がり、座布団に座って扇子を前に置いてお辞儀をします。扇子は結界で、こちら側で起こっていることは現実のことではないと表した後、羽織を脱いで俗な噺の本題に入っていく儀式です。

 

商家に於ける帳場格子も帳場と客とを区切る結界であり「のれん」も下げることにより、往来と店とを柔らかく仕切り、時間外には仕舞うことで営業していないことを表示しました。「襖」「障子」「衝立」「縁側」なども空間を区切る結界です。

 

長年の暮らしぶりは日本人の考え方を決めた気がします。

例えば東日本大震災で食べ物もなく暴動が起きても不思議でないのに、日本人は静かに列に並んで外国から賞賛されたことです。

それも結界という考え方から理解できます。

 

つづく

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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