結婚式の祝儀袋の内袋の金額はどのように書くか?☆「品格の教科書」を読んだ方からのご相談
ちょっとお聞きしますが、と電話。
「結婚式の祝儀袋の内袋に金額を書く時に
十万円と書くのか、いち十万円と書くのかどちらが本当でしょうか?」
今は簡単に普通に書くことが多いのですが、
本来は「壱拾萬圓」と書きます。
一、とか 十とか、画数の少ない簡単な字では
書き換えられる恐れがあるからだ
と父に教えられました。
お電話をかけていただいた方にも
その理由をお伝えしました。
電話のやり取りを聞いていた母が思い出話をし始めました。
車の免許を取ってすぐに、
どこかへ営業に行こうと思って思い立ったのは
西国三十三番の札所「谷汲山」
西国三十三番と言う事は
一番の那智大社から始まり全部を回って満願で
最後にお札を納めるお寺です。
それは全国に知られた立派なお寺です。
そこへ飛び込み営業をした母もスゴイと思います。
その頃の管長さん(谷汲山で一番偉い人)は
お腹がぷっくり出た大黒さんの様な風体の人でした。
人間的にも包容力があり立派な方でそれはそれはしっかりした人でした。
母はその時、晒(さらし)などを買ってもらったそうです。
晒は綿の長い布です。
昔は切ってふきんにしたり、男の人はお腹に巻いたりして必需品でした。
初商いの後、母が領収書を書いているのを見て
管長さんは
「その領収書はうちでは使えない」と言われました。
昔の漢数字で書いてくれ、と。
母が呆気に取られていると、
管長さんが見本を書いて
この通りに書きなさいと言われたそうです。
一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、百、千、万、円
壱、貮、参、四、伍、陸、漆、捌、玖、拾、佰、仟、萬、圓
これは「大字(だいじ)」と言われる漢数字の表し方です。
大字で表すのは、重々しさを出すためにも使われます。
電話の方のお祝いも
「十万円」と書くより「壹拾萬圓」と書いた方が重みを感じます。
同じ金額でも多くもらった気がしませんか(笑)
改ざんされないため
というのは
「一」では 1を書き加えれば、簡単に「十」になってしまいます。
書き足しできないために
最初に「金」最後に「也」を必ずつけよ
と父は言いました。
さらに法的文書では
「一、二、三、十」は
「壱、貮、参、拾」の漢字を使うことが定められているそうです。
そういえば、
絞りのトップメーカー「藤娘きぬたや」さんの領収書は今でも大字で書かれます。
若い社員さんでもきぬたやさんへ入社したら覚えなくては集金にも行けないね、
と感心します。
それを今も守っていることは「固い会社」としての信用を増していると思います。
母は、初商いの後、
管長さんの信頼を得て亡くなるまでとても親しくしていただきました。
「この風呂敷はね~、谷汲さんの管長さんに内緒でもらったものなんだよ」
素晴らしい厚手の丈夫な綿の生地を使った大風呂敷を
さらに4枚つないだ特大風呂敷で布団も一組包める大きさがあります。
「谷汲山」と染め抜かれていました。
綿の風呂敷とは言っても、見るからに別格の風格があります。
風呂敷にオーラという言葉は変かもしれませんが、
特別なものだということは子供の頃でも感じました。
「この風呂敷に包んで商いに行くと必ず買ってもらえたんだよ」
今でも母はその風呂敷は特別の特別な時にしか使いません。
1本のお電話からしばらく、母と昔話に花が咲きました。
長年、呉服屋をしてきた経験からの
エピソードもいっぱいです。
「品格の教科書」は全国の書店さん、
またはアマゾンで手に入ります。
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