武家社会の信頼関係を今も引き継ぐ、座布団の使い方☆座布団の作法2

日本文化であそぼ

「お客さんがみえるので座布団を並べておいて」小さい頃、裏の座敷で座布団を並べるのは私の仕事でした。祖父のお客様がみえて毎晩のように会合があったため、人数を聞いて机の周りに均等に並べました。

作法では、座布団はその人の座るべき位置を示したもので、勝手に動かしてはいけないことになっています。

 

ということは私はとても大切な役割を担っていたようです(笑)

 

座布団は日頃、座敷の脇に積んであります。使う時だけ並べます。

 

 

座布団には裏表があって裏側を使用する事はありません。

 

 

自分の使っていた座布団を裏返しにして人に出すのは、大変失礼なことです。人に座布団を渡すときは、形を整えて上をサッとなでて前後に気を付けて出せば良いのです。

 

座布団の裏表についてはこちらを見てください。

日本ではクッションより座布団☆座布団の作法1

 

 

今は家で行うことも無くなった結納(結婚を決める儀式)ですが、挨拶(口上)を述べるときには、座布団は決して敷きません。結納でなくても、

正式な訪問の時はそのお家の人に勧められる前に座布団に座りません。ご挨拶が済んでから座布団の上に座ります。

 

挨拶はへり下だってするものなので、座布団を敷いてゆったりと上から目線でするものではないからだと長年思っていました。

 

なぜそうするのか、それは命のやり取りをしていた武家社会のころの人間関係を引き継いでいたのです。

 

武士の時代は縁の下に潜んでいる敵に襲われる危険がありました。畳のヘリの間から刀を突き出して襲うこともあったようです。それを防御する役目が座布団にはあったのです。

だから他所の家でご挨拶をするときに座布団を外すと言う事は「私はあなたを信用しています」と言う表現でもあったのです。

お茶室でも座布団を敷かない事も同じ理由です。相手を信用して腹を割って茶室で交渉ごとを行った茶道の伝統から来ているのです。

 

 

 昔は座布団を出すときは、必ず二つ折りにしたものを広げて出すといった作法がありました。これも、座布団にはあなたを傷つけるようなものを決して忍ばせておりませんと言う表現でもあったのです。

さすがにこの作法は見かけなくなりました。

 

座布団はただ足の痛みを和らげるだけのものではないのです。

 

座布団と言うものを通して、相手への信頼を言葉ではなく形で表現したハイレベルなやりとりがあったのです。

 

雨続きで裏庭の苔の緑が瑞々しく、生き生きしています。この景色、好きなんだな〜!

 

 

昔から引き継がれて今も在るものには、何百年もの歴史があります。

そういった過程も知っておくと作法やマナーが決して形の踏襲だけでなく、意味のあることだと理解できるでしょう。

 

 

 

 

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                          山本由紀子

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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