「品格の教科書」P40音に気を付ければ、美しい所作になります
品格の教科書
老舗料亭へ行った時のことです。
若い板前さんが陶器の器に入った煮物を持って来てくださいました。
器をまるで生まれたてのひよこを愛おしむように両手で包み込むように持ち上げて、テーブルの上に静かに置かれました。
あまりにぎこちないほど丁寧な仕草に思わず微笑みたくなりました。
テーブルの上にドスンと置けば音がします。
先に一方の端をテーブルに付け、後からもう一方を置けば、器もテーブルも傷つきません。
音もしません。
よほど厳しく器の扱いを指導されているんだなあと思いました。
音は空気の振動です。
動きが丁寧であれば大きな音はしません。
自分の思うままに行動する人が発する音は、周囲への配慮や心遣いを欠いています。
「ガサガサ」というビニール袋の音、
「コツコツ」と響くヒールの音
「ザザザー」という椅子を引きずった音、
突然鳴り響く着信音・・・
心を伴わない動きは不快な音を生み出します。
学生時代、京都のおばあさんのそばでお茶碗を拭いていた時に諭されました。
「上から順番に取ったら、そんな音はしません。お茶碗が悲鳴をあげていますよ」
同じお茶碗や、お皿を下の方から引きつり出していたので、無用な音を立てていたのでした。
音が出る扱いは、割れたり傷つけたり欠けたりする原因になります。
それからは、あらかじめ同じお皿を集めてシンクに持っていって洗うようにしました。
カゴの中ではもう器は整理されていました。
自分の音には意外とおおらかで、周りの迷惑に気付かないものです。
きっと、おばあさんはそれまでずっと我慢していたのでしょう。
私がいつまで経っても気付かないので、見るに見かねて注意したのだと思います。
「音を出さない」ことを気にすれば美しい所作を身に付けることが出来ます。
音は周りの人への配慮ができる人かどうかのバロメーターなのです。
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