振袖に結ぶ縁起の良い帯結び「ふくら雀」の由来☆いちばん身近な鳥は一年中、俳句の季語にもなっています。

きもの豆知識

「今どき、振袖にふくら雀なんて結ばないよね~」以前は振袖に帯を結ぶ時は「ふくら雀」か「文庫」結びしかありませんでした。「ふくら雀」はお太鼓の上に扇が左右に付いた形、「文庫」は一番一般的な浴衣帯の結び方で、武家の女性の結び方、そうそう大岡越前の奥様が結んでいました。と言っても今は時代劇が少なく、わかりにくいですよね。残念です!

 

振袖などの帯結びは羽いっぱいの複雑な結び方にするので、ふくら雀を結ぶことはまずありません。伝統を重んじる皇室の方々くらいでしょう。

振袖に盛んに結ばれた帯の結び方がなぜ「ふくら雀」と言うのか、考えてみたこともありませんでした。ふと、俳句の季語を見ていた時に、そうだったのかと気づきました。

 

雀は一年中、俳句の季語にもなっていて「すずめの子」は春、「内雀」は夏、「稲雀」は秋、そして「ふくら雀」は冬です。冬の寒い日には羽毛を膨らませ、中に空気の層を作って熱を逃がさないようにするので、丸くふっくらとした姿になります。それを「福」のごろ合わせで「福良雀」「福来雀」と書き、富と繁栄を象徴する縁起の良い鳥となりました。

 

ふくら雀はふっくらした冬の雀です。

 

 

雀は身近にいて可愛く馴染み深い鳥ですが、お米を食べる害鳥として嫌われてもいます。たわわに実った稲にぶら下がって穂をついばんでいる雀も時々見ます。

 

昔懐かしい童話「舌切り雀」ではおばあさんが作ったのりを雀が食べてしまい、怒ったおばあさんは雀の舌を切ってしまいます。今の「のり」を想像すると話が通じませんが、昔は紙をくっつけるのにもお米を潰してのりを作っていました。小さい頃、祖父は手紙の封をするにものりがないとご飯粒を2、3粒取って潰して貼り付けていました。障子紙を張り替えたのも米のりだったようです。お米を食べる雀は稲作の敵だったのです。

 

 

 

中国では毛沢東が勧めた大躍進政策の中で伝染病を媒介するハエや蚊、ネズミ、そして穀物をついばむ雀を「四害」と指定し、徹底的に駆除する政策が取られました。鍋やフライパン等を叩いて追い回し、疲れ果てて地面に落ちた雀を捕まえました。駆除された雀は数億羽にも上ったと言われています。

 

しかしイナゴを食べる雀の激減してイナゴが大発生してしまいました。米が取れなくなり、結果的に数千万人もの飢餓が出てしまったのです。

面目を取り戻した雀は「四害」から外され、その代わりに南京虫が加えられたそうです。

 

雀は人間の近くの建物に巣を作り、人間の生活をうまく利用しながら繁栄してきた鳥ともいえます。せせこましくバタバタときて、バタバタっと飛び立っていきます。見ているとせっかちな鳥です。人間のそばに居るには警戒心が欠かせないのかもしれません。

 

一時、雀の病気が流行って北海道を中心にたくさんの雀が死んだと言われています。その頃、近所でも雀の姿がめっきり減ってこのまま絶滅危惧種になってしまうのかと心配しました。

娘たちが生まれた朝も窓の外で雀がチュンチュンと鳴いていたので目覚めたのを未だに時々思い出します。私に取っても雀は縁起の良い鳥なのです。

 

「ふくら雀」も縁起を大切にする着物の帯結びにはちょうど良い名前だったのでしょう。

それでもやはり今更「ふくら雀」を結ぶことはないでしょう。となると、他の帯結びに縁起の良い名前を付けるとしますか。

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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