「単」の季節も「薄物」の季節も、半年着られる「九本絽」の着物☆「染めの百趣 矢野」見学記2

きもの豆知識

「九本絽、と言ってこの織り方は当店だけのために織ってもらった生地です」

そう説明されたのは、夏着物でした。当店でも何人かのお客様に買っていただいています。

 

九本絽の振袖。慌てて写真を撮ったのでシワになっていてすいません。

 

横糸九本をしっかり目を詰めて織り、次の一本だけを透かし織りにしてあります。

「見ただけで分厚い素晴らしい生地だとわかるね」と話していた生地でした。

 

裏側に手を入れてもほとんど透けません。

 

普通であれば夏の薄物と言われる「絽」は裏に手を入れると透けて見えます。

ところが生地が良いので、ほとんど透けません。

そこで「九本絽」は単と夏の時期全てに着られるのです。

 

 

「ということはゴールデンウイークから10月半ばまで半年着られるのですね。」

 

 

「今後温暖化が進めばもっと長く着られるようになるでしょう」

 

 

 

 

「どの生地を使うか」は染物をプロデュースする上で一番大切な部分です。

着た時の裾さばきや着心地を大きく決める重要なポイントとなります。

 

 

パリッとして硬い生地は体に巻きつけた時に沿わないので着心地が悪いのです。

また腰がなくてタランとした生地は足にまとわりついて歩きにくく、動きづらいのです。

 

 

「奥さまのアドバイスはいい参考になりますね」

 

 

矢野さんの奥さまは長年茶道を習っておられるのを知っていました。

以前、当店のお客さまをお連れした時、丁寧にお茶を出していただいてお客さまが感動しておられたのを思い出しました。

「そうなんです。一番厳しい意見を言ってくれます」と笑っておられました。

 

 

「生地にこだわるのは、どんなに頑張っていい色を染め用としても深い色が出ないからです」

この色をもっと薄い生地で染めてくれと言われても無理なんです。

「小池都知事がオリンピック旗を受け取られた時の着物は色鮮やかでテレビにも写真にも映えましたね。あの色はやはり矢野さんの染めでしかできない色でしたね」

 

 

「生地の裏を見ても、表とほとんど変わらないくらい鮮やかに染まっていますものね」

裏を撮影していたら、皆さんからほ~~っとため息が出ました。

 

 

裏はお仕立てしてしまうと見えなくなってしまうので、私は写真を撮っておきました。

矢野さんの染めの良さを実感していただきたかったからです。

 

 

着ているだけで、その違いは一目瞭然、人間の目はちゃんと違いがわかってしまうほど優秀なんです。

 

 

「品格の教科書」は全国の書店さん、

またはアマゾンで手に入ります。

 

 

 

山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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