京都の町屋の夏の設えと網代(あじろ)

日本文化であそぼ

「あじろって泣かはるねん」

中学性だった夏休みに京都のおばあさんの家に初めて泊まりに行った時に思わぬことを聞きました。金閣寺の近くにあったおばあさんの家は大きくはなかったのですが、玄関から全てが京都の建築の翠を集めた家でした。特にお茶室は凝りに凝ってあって、中学生の私でさえ芸術品の中へ入った感覚がしました。

 

おばあさんの家には玄関にも天井にもそこかしこに色々なデザインの網代が使われていました。

 

「網代」(あじろ)は竹や桧、杉などを薄く割って互い違いにくぐらせて編み込んだもので、天井や壁、建具など建築資材に使われます。

 

左側、斜めに組んであるのが代表的な網代です。

 

 

「網代が泣く」どういうことか理解できなくて、私はきょとんとしていいました。おばあさんはその様子を見て、網代は温度や湿気によって緩んだり締まったりするので、奇妙な音がするのだと教えてくれました。何十年も経てば次第に泣かなくなることも、その時知りました。

 

網代の繊細なデザインへの憧れはあの時から忘れえぬものとなりました。

お寺や古い家で網代が使ってあるのを見ると、とても貴重なものに会えて懐かしいものに思えるのです。

 

 

 

6月1日は京都の町家では特別な日です。夏向きの設えに模様替えするのです。

 

建具を取り外して片付けて、よしを組み込んだ透ける建具や簾に変え、畳の上には網代に組んだ藤の敷物を敷きます。

昔から京都では「家は夏を旨として造るべし」との言い伝えがあります。

 

京都は四方を山に囲まれた盆地で蒸し暑く、庭に打ち水をして風通しを良くして少しでも涼しく過ごせるようにしたのです。

冬は着物を着込めば過ごせるということだったのでしょう。

 

余談ですが、私が居る町屋も夏は思いの外涼しいです。外から帰ると冷房が入っていなくてもすーーっとします。その代わり冬は恐ろしく冷え込みます。

 

 

京都市の文化財に指定されている取引先の染屋さんのお宅があります。夏向きの設えに変えるために毎年社員さんが総出で丸2日かかる大変な作業だそうです。

 

一番大変なのは網代に編んだ藤の敷物を敷くことです。

 

丸めて保管してあった敷物を、何人もが一線に並んで広げます。息を合わせて少しづつまっすぐに広げないと歪んで斜めになってしまうんだそうです。

 

少しでも歪んだのを見過ごして広げると、歪みがどんどんひどくなって結局もう一度丸めてやり直すしかないんだそうです。

「一つ一つやるべき時に手を抜かず、みんなで心を一つにしてやらねば余計に手間がかかる」その話は教訓のように身にしみました。

 

 

入り口の藤の敷物は荒い目の網代、中の間は少し細い目、いちばん奥座敷の網代は本当に細く見事なものです。入り口の網代に比べ奥座敷の網代は10倍以上も高額なもので、敷くのも扱うのにも繊細なので大変だそうです。見えないところに苦労があるのですね。

 

おばあさんの家も夏は網代が敷いてありました。真夏でもひんやりしてとても気持ちが良くて、うっかり昼寝をしてしまったら顔に網代の跡が付いていて笑われました。

 

実はうちの町屋にも網代が使われています。

長くなったので明日に続きます。

 

 

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[ごあいさつ]
皆様にはお元気でお過ごしのことと思います。
私も3月末より長らく京都店を閉め岐阜にこもる生活を余儀なくされていました。
3日ほど前、用があって京都へ行ってまいりました。観光地はともかく、四条烏丸周辺は元の賑わいを取り戻していました。正直、ほっとしました。そこで、

6月よりご来店のご予約を承ります。

相変わらず、岐阜と東京などの出張、仕入先との打ち合わせなどで留守にすることも多いと思われます。

ご都合を合わせてベストな対応をさせていただきたいと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。
                          山本由紀子

 

7月から京都店でも着付け教室を再開します。

ご都合が良い日をお知らせください。

着物まわりの雑学にも詳しくなります。

自分で着物を着られたら嬉しい〜🎵

 

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*ご都合の良い日をお申し込みください。

上記以外でもお受けできる場合がありますので問い合わせフォームに書き込んでください。

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ご都合の良い日を打ち合わせて決めまさせていただきますのでお申し込みフォームに書き込んで送信してくださいね。

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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