下絵を描く「青花」を育てているのは全国でたった一人のおじいさん☆「染の百趣 矢野」見学記4
きもの豆知識
驚いたのが「あおばな」を育てる人が絶滅しそうだという話です。
「あおばな」とは露草(ツユクサ)の水色の花から絞り、図案を生地に移す「下絵書き」に使います。
露草はツユクサ科の一年草で、花は初夏から見られます。
日が高くなるとたちまち萎んでしまいます。
古くは万葉集から「はかないもの」のたとえとして和歌にもたくさん詠まれていました。
「月草に衣は摺らむ朝露に濡れてののちはうつろひぬとも」
「露草で着物を摺り染めにしよう。朝露に濡れた後では色褪せてしまうとしても」
露草の青は美しく、好んで染め付けに用いられましたが、
色は褪せやすいので、恋歌では人の心のうつろいやすさの象徴とされてきました。
逆に、水につければ跡形もなくきれいになくなってしまう「青花」が重宝されたのですね。
「あおばな」の栽培は全国を探してもたった一人!
滋賀県に住む80歳を超えるおじいさんが一人だけしかいないのだそうです。
ほとんどは化学染料で代用しています。
無くなっても困らないといえばそうなんですが、一度なくなったものは再生するのは殆ど不可能です。
そのおじいさんが少しでも長く作り続けてくださることを祈るばかりです。
そして化学染料でもいいのに、あえて「青花」を使い続ける職人さんを応援したいものです。
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