「お取り越し」と品格
「いつもお仏壇をきれいにしていらっしゃいますね」
お取り越し(おとりこし)に来てくださったお坊さんが褒めてくださいました。
「お取り越し」は簡単に言えば、各お家で行う報恩講(ほうおんこう) 浄土真宗の開祖、親鸞聖人のご命日の前一週間から行われる法事です。
幼い頃から、お取り越しは一年の締めくくりのお参りと思っていました。
「お盆と正月の前、年2回は必ずお磨きさんをするんですが、結構力が要るんですよね。半日はかかってしまいます。でもピカピカ光るとやってよかったなぁって思うんですよ」
と母。
「お磨きさん」というのは金ピカの仏壇の飾り物を磨くことです。半年もすると中から錆びが浮かび鈍い光になってしまいます。それをペースト状の研磨剤で磨き拭き取るとピカピカになります。油分をよく吸い取る新聞紙でゴシゴシ擦るのはなかなか骨の折れる作業なのです。
「今はもう『お取り越し』どころか法事もしない人が増えてしまって、お磨きさんのやり方なんも飾りもんをどこへ置くか、どうやって組み立てるかなんてわからないんじゃないかなぁ。」
「皆さ〜ん、頑張って法事やりましょうとか、お磨きさんやりましょう〜」なんて熱血教師みたいなことも言えませんしね」お坊さんの言葉に大笑いしました。
確かにお坊さんが言われるように、
「そんな面倒なこととかそんなことやりたくないよー」って言う人が圧倒的に多いのかもしれません。しかし、本当はやりたいんだけどどうすればいいのかわからない、教えてくれる人もいないから出来ないという人もいるのではないかと思います。
それをそのまま私に当てはめると、品格に関することも、着物も同じことが言えるのではないかと思いました。
自分が幼い頃、厳しく躾けられたのが嫌さに、所作や風習を人には言いたくない方が優先してしまいます。
しかし、「品格の教科書」を読んでくださった方はもっと知りたいと言ってくださいます。
着物が好きなのにどうしていいかわからない、もっと着物のことを知りたいのに誰か教えてくれないかなあと思っていらっしゃる方もきっとあるはずです。
自分で気持ちが退くことなく信じて伝えていこうと決心を新たにしました。
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