「真綿(まわた)」って何?「綿」ではない歴史と使われ方☆二大紬「大島紬」と「結城紬」のわかりやすい違い

きもの豆知識

「今朝は暖かそうな着物着たね」

「この寒さだからねえ。やっぱり真綿紬(まわたつむぎ)はあったかいわ〜」

「文字通り『真綿(まわた)にくるまれる」ということだね。」

 

 

「真綿(まわた)」とは綿(めん)ではなく、絹です。

 

弥生時代に養蚕が大陸から伝来し、かつては「綿(わた)」といえば絹でした。

室町時代から木綿の生産が始ままるとそれを「綿」と言って、それまでの絹製のものは「本当のわた」という意味で「真綿(まわた)」と区別されました。

 

全国で作られている紬(つむぎ)も大きく2つの特徴に分かれています。

真綿のふんわり厚手の風合いの「結城紬」系と、ツルッとした薄手の「大島紬」系です。

 

 

鹿児島や奄美で作られている「大島紬」はツルッとした風合いです。

 

薄手の紬は撚糸(糸を回転させて撚りをかける)がかけられた細い糸で作られていてサラッとして足捌きがいいです。代表的なのが鹿児島や奄美大島で作られている「大島紬」です。

一方、糸に撚糸をかけずふんわり厚手、真綿状で暖かいです。真綿系の代表的なのが茨城県結城市を中心に織られている「結城紬」です。

 

 

友達の呉服屋さんの話を聞いていると、主に関東から西では大島紬が珍重され、東北や北海道の呉服屋さんでは結城紬しか売れないなどと言われます。大島紬はひんやりしますから、寒い地方では結城紬のような暖かい着物が喜ばれたのでしょう。

私も2月だけは結城紬など真綿系の着物を着ます。圧倒的に暖かいからです。岐阜でも京都でも他の時期には暖かすぎて、薄くてサラッとした大島紬を着ることがほとんどです。

 

 

着物になる真綿は上質な絹を袋状にして伸ばして糸を引き出して作るのですが、

真綿の大部分はクズ繭から作られていて、お布団の綿入れの補強に用いられていました。

 

 

当店もお嫁入りの着物の注文を承っていた関係で、私が幼い頃は布団も扱っていました。多分、東海地方の呉服屋の多くはそうだったと思います。

 

真綿(写真:塩野屋さんより)

 

5個くらいの繭を型枠に広げて干してハンカチ大に成形された「真綿」を2人で4角を持ち、後ずさりしながらお布団のサイズへ手引きして慎重に広げていきます。木綿綿をふっくら布団の大きさに伸ばした上に綿がずれないようにあみをかけるように固定します。あんなに小さくて薄いものが、こんなに大きくなるのかと不思議な気持ちで見ていたものです。

 

真綿の一枚はとても薄いです。1枚1枚めくって売っていました。(写真:塩野屋さんより)

 

そんなわけで、昔はお家で布団を打ち直される(木綿綿を新しいものに変える)方のために、当店でも真綿を売っていました。

祖母は冬には肌着の背中に真綿を貼り付けて着物を着ていました。

真綿は繊維が絡まっているので一度くっ付ければずれることは全くありません。

「こうすると軽くて背中が暖かい」と喜んでいたのを懐かしく思い出します。

 

 

今では「真綿」と言う物を見ることもないでしょう。言葉も「死語」なのでしょうね。

昔から伝わる良いもの、素晴らしい知恵をあらためて知ってほしいものです。

 

 

「彼女は真綿でくるむように育てられた」

大事にしすぎて、過保護気味に育てられた、というのが意味です。

母には真綿に包まれて温かく過ごしてももらいたいものだと思うのです。

 

 

 

品格の教科書」は全国の書店さん、

またはアマゾンで手に入ります。

 

 

 

 

 

 

山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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