茶道の儀式と着物を楽にたたむ方法☆「型」に秘められた合理性

「品格の教科書」に載らなかった話

犬山城の真下にある国宝のお茶室「如庵」へ行ってきました。

利休が好んだと言われる茶室の広さ2畳よりは少し広い3.25畳です。躙口(にじりぐち)という小さな四角い穴のような出入り口を通って入ります。

 

写真の真ん中の板張りの部分、躙口(にじりぐち)を開けて入ります。(写真:名古屋鉄道より)

 

茶室に持ち込めるのは自分の体一つだけです。戦国時代でさえ茶室に入る時だけは外で刀を預け、丸腰で入るという決まりです。そうした「型」をプロデュースした千利休は、まさに当時のイノベーターでしょう。明日は敵になるかもしれない相手とも、この時間ばかりは膝を突き合わせて茶を楽しむ、そのことにより戦いが回避されたことも多かったとか。

 

 

学生時代に身を寄せた親戚の京都のお婆さんは私にいろいろなお稽古事をさせました。

茶道もその一つ、いちいちこんな面倒なことをしなくてもさっさとお茶とお湯を入れてシャカシャカっとして飲めば良いのにといつも思っていました。それでもお稽古を続けられたのは美しくて美味しい和菓子の魅力に惹かれたからです。

 

お稽古から帰ったある時、茶道には「手為り(てなり)」という言葉があることを教えてくれました。。お点前(てまえ)で,器物を扱う手の動きが自然に無理なくなされることを意味しています。

 

左のものは左手で受け取り、右のものは右手で受け取る、左手に近いものは左手で持ち上げ右手に持たせれば体を無理にねじらなくても済みます。茶道の様々な決まりごとは一見面倒そうに見えても、実は非常に合理的なのだと教えてくれたのです。それを聞いてからお茶のお稽古に行くのも楽しみになりました。論理的なことが大好きな私にはとても説得力がありました。

 

「呉服屋さんなら、着物は膝の上でもシワなく畳めないといけません」と言ってお婆さんが教えてくれたのが「手為り」を基本とした着物の畳み方でした。

女性の着物の着丈(長さ)は身長です。着物を全部広げて一度に端から端まで畳もうとすると体を大きく伸ばしてあちらこちら動かさねばなりません。ストレッチ体操をやっているような状況に陥ります。日常にたくさんの着物を畳まねばならない呉服屋にとっては体力消耗戦です(笑)

 

 

インターンシップに来てくださった中学の生徒さんにこの方法で着物の畳み方をお教えしました。

先ず下半分だけ畳みます。

二つくらい折って動かないよう止めておき、着物を動かして上半分を畳みます。

 

先ず下半分を先にたたんで止めておきます。

次に着物をずらして、手の届く範囲に動かして上半分を畳みます。

最後に止めておいた裾の部分を上まで引き上げて半分(真ん中あたりの折り目)に折ります。

 

体はほぼ動かさず、手の動きだけで無理せずに畳めます。

面倒そうに見える二度畳みですが、慣れるととても楽に畳めます。おばあさんが言ったように車の中、膝の上でも畳めます。

 

 

 

茶道の動き「型」は一見、面倒な儀式のように思えます。しかし、そうした方が良い理由があって決められた合理的なものなのです。「手為り」という考え方にもいろいろな知恵が詰まっています。そう言った視点で茶道の動作を観てみるのも面白いですね。

茶道をもう一度習いたいなあと思う最近です。

 

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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