「土足厳禁」でない家☆「品格の教科書」第1章 しぐさの品格より

品格の教科書

京都のサロンの近くに素敵なレストランがあります。(写真は日本家屋のイメージです)

お料理も美味しいです。

どっしりした構え、雰囲気も素晴らしい登録文化財です。

でも、どうしても行く気になれないのです。

 

 

最近、明治大正時代に建てられた「登録文化財」の建物が

結婚式場やレストランとしてリニューアルされ、とても人気があります。

 

 

そのような場所では玄関に

「土足でそのままお上がりください」

 

の立て札があります。

 

 

いちいち靴を脱がなくてもそのまま上がれる手軽さとモダンさを採用しているのです。

 

ビルやマンションと同じ扱いに、

洋服を着たまま温泉に浸かるような違和感を感じます。

 

 

ピカピカに磨かれた上り框(あがりかまち)は

たくさんの人たちが靴で踏むため、すり減っていました。

 

 

 

その様を見る度に、胸がキュンと締め付けられます。

そのレストランは250年以上も栄えた呉服屋さんの建物です。

よほど栄えたお店だったのでしょう。

 

 

素敵なデザインの建築で、手すりや天井も素晴らしい彫刻が施してあります。

 

木のことをよく知らない私でも、上質な材木が使われているのがわかります。

 

柱も床もピッカピカに磨かれています。

 

 

せめて床に絨毯でも引いてあればいいのですが、

ヒールの音がコツコツ、、、見ると床がいっぱい傷ついています。

一旦傷ついた床はもう元には戻りません。

 

 

見たくなーい、

ヒールの音も聞きたくなーい、

寂しくて、情けなくて・・・

「廃業するということはこういうことなんだな~」と身につまされます。

 

 

 

当店の岐阜の本店の裏にある座敷は築180年以上経っています。

「昔は毎日糠袋で柱や床を磨いたんだよ。

木は水拭きするとツヤがなくなるけど、糠袋はピカピカになるからね。

特に上がり端(上がり框『カマチ』)は人をお迎えする場だから

他のところより念入りに何度も磨いたもんだ」

と祖母は慈しむように上り框を撫でていました。

 

 

晒し木綿の布で縫った袋の中へ煎った米糠を入れてこすります。

一ヶ月もすると米糠の油がいい具合に滲み出ます。

 

 

 

祖母は女中さんたちと毎日その糠袋で磨いてきたのです。

五年、十年と磨くとだんだん木の内面から輝くようになります。

 

 

欧米人はベッドの上で寝るとき以外は、ずっと靴を履いたままです。

玄関先に置いてあるドアマットで靴を拭えばきれいになると考え、

くつろいだ時でも靴をはいたままで床の上に座ったり寝転んだりします。

 

 

しかし、

「靴を履いたまま」と言うのは日本人にとっては土足であり、

もともと「土で汚れた素足」と同じ観念があります。

汚いと言う感覚を払拭することができません。

 

 

日本人は「内」と「外」を厳密に分けてきました。

 

「人の家へ土足で上がる」

「人の顔に泥を塗る」

 

と言う表現は、

相手の人格を無視し礼を失した行為である時に使われる言葉です。

 

 

人の家に伺うことは相手の領分に立ち入ることです。

 

 

相手の玄関前では一呼吸整えて、身だしなみをもう一度チェックします。

 

家へ靴を脱いで上がり境界を超える時にはプライバシーを尊重し、

相手への心使いを忘れてはいけません。

 

 

玄関のあり方は、折り目をつけて人間関係を育んできたことを物語っています。

 

元リッツカールトン総支社長、高野登さんが「おもてなしに携わる全ての人に読んでほしい」と推薦してくださいました。

 

 

「品格の教科書」は書店さん、またはアマゾンで手に入ります。

山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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