お正月迎え、餅つきの記憶☆草餅は春の香り

歳時記

「もう、よもぎが生えてるんだね」

毎年なら1月の終わりにしか食べられない草餅をもらいました。

 

 

12月28日はお餅つきをする日です。

29日が「9(苦)餅」30、31日は押し詰まってからバタバタで餅つきなんかするもんじゃないと言われて、たいていの家では28日に餅つきをします。

今ではほとんどが餅つき機ですが。

 

 

 

幼い頃、母方の実家のお餅つきにはよく遊びに行きました。

そのころは臼と杵でお餅をついていました。

薪をくべて燃えるおくどさんに掛けられた鍋からは盛んに蒸気が上がっていて、その上には餅米が入ったセイロが重ねられていました。

蒸し上がるとおばあちゃんが手際よく臼の上にひっくり返しました。母の弟たちが杵に水をつけてこねていきます。そのこねる作業がお餅の出来具合を決めるほど大切で、ぺったんぺったんと突くのは最後少しだけでした。

 

臼は木製と石で作られたものがあって、木の臼はついている間にも木が水分を吸うので幾分かたいです。その点、石は柔らかてよく伸びました。

 

おじいちゃんはお酒が飲めない人で、お餅が大好きだったので多いときは16臼もついたそうです。

 

 

中でも大好物だったのが、草餅です。

母の実家では毎年、1月には土筆(つくし)やヨモギが出てきます。

 

荒れた土地でも踏み潰されても生えるヨモギの生命力にあやかり、昔の人が食べ始めたといわれています。そして、お灸の艾(もぐさ)にも原料にも用いられています。

 

 

おじいちゃんはよもぎを「草蓑(くさみ)」に山盛りとってきました。ゴミや硬い茎、違う草を取り除いて生薬するのはかなりの手間で、半分の量になってしまいます。それを茹でて柔らかくし、お餅に突き込みます。お店屋さんでは色粉を足して色を出しますが、おばあちゃんの草餅は蓬だけでキレイな緑色のお餅ができます。あんこも時間をかけて丁寧に灰汁をとり炊いてざらめで甘みをつけ、蓬もちで包み込みます。

 

おばあちゃんの草餅は本当に絶品でした。

そして今はお嫁さんが忠実におばあちゃんの作り方と味で作り続けています。

 

 

母はもちろん、私も幼い頃からこの草餅は大好きです。

 

 

「この味は始めて食べた人でも懐かしい〜」と思うんじゃないかな?

自然の恵みを取り入れるのは遺伝子レベルで身体も味覚も喜ぶのではないでしょうか。

どんなご馳走もある時代ですが、一番のご馳走であり贅沢なのだと思うのです。

食べていて体にすーっと入り、体が喜んでいる感覚がとても好きです。

 

 

春の香りを頂きながら、たった半世紀で激変した生活ぶりを母と振り返っていました。

 

品格の教科書」は全国の書店さん、

またはアマゾンで手に入ります。

 

 

山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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