国有形文化財の京町家「藤野家住宅」建物の中
「床の間の横に四角い穴が空いているのは『チンくぐり』って言って、犬のチンがここを行き来したんですよ」
殿様や貴族に愛された小型犬「チン」がくぐれるような隙間としてこの名がつきました。本来は、書院から採り込んだ光を違い棚の下側の奥までとどかせる役目がありました。
この隙間は大正から昭和初期に建てられたという当サロンにもあります。
御所の南にある国登録有形文化財「藤野家住宅」は大正15年に建てられました。
「一度、行ってみたい」と思っていたらお茶会に誘っていただけました。
外は「大塀造(だいべいつくり)」と言われる高い塀を設けた町家です。
商いを営んだ町屋には見られない、裕福な商人や医者などが住宅専用に建てた建て方です。
「ここに松がありますやろ。これが大変なんです。毎年、庭師さんが手作業で松の葉をむしるので3人で3日かかります」
「松の木は道楽息子を一人抱えているのと同じなのよ」
京都のお婆さんに聞いたことがありました。
庭師さんの日当✖️人数✖️日にち=???
思わず、松の木だけでもたいへんな維持費がかかることを計算してしまいました(苦笑)
奥の蔵を望む庭にはつくばいと灯籠がありました。
灯籠の足元に彫ってあるのはマリア様なんだとか。
「キリスト教信者だったわけではありません。この頃、オシャレにマリア様のデザインが流行ったのです」
宗教におおらかな日本人らしいですね。
庭の左手には一年半前までは現役だったという「五右衛門風呂」がありました。
「薪をくべていると気持ちが落ち着くんですよ」
一人キャンプで薪を立つのと同じですね。
「この風呂を復活させたいと思っていますが直せる職人がいないんですよね」
先になれば余計にいなくなりますよ。
技術者はどの世界でもいなくなっています。一番若いのが団塊の世代75歳ですから。
ところでお茶会はカジュアルというだけあって、とても和やかな集まりでした。
季節を感じるお菓子を味わい、お茶を飲みながらみんなで談笑する。
本来、お茶とはこういうものでコミュニケーションが図れる、そう言うものなんじゃないかな?
またお茶が習いたくなりました。
藤野さんのご苦労は身に沁みます。
当店の岐阜の家もそうですが、古い家を守るのはとても大変です。
古くなればあちこちが傷みます。すぐに少しづつ手を入れて修理していかなければ急激にひどくなります。
直すのにも技術を持った職人さんでなければできません。
直したことがわからないように補強するのですから、いくらお金をかけても見えません。
一般財団法人「藤野家住宅保存会」として支援を募っていらっしゃいます。
こちらをご覧ください。
藤野家住宅保存会について
さて、山本呉服店の築180年の建物も大掛かりな修繕が必要になっています。
うちも大変です!!
そのお話はまた。
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