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呉服屋で着物をかけて見せる「しゅもく」とは☆小説なのに経営に役立つ「あきない正傳 金と銀」に見る商いの工夫1

由紀子の日々

「『しゅもく』って杖からできたんだって」

最近ハマっている小説「あきない正傳 金と銀」(六)を読んで母に早速話しました。

「あきない正傳 金と銀」はNHKでもテレビ化された「澪つくし」と同じ人気作家、高田郁(かおる)さんが大阪の呉服屋を舞台にして書かれた小説です。一昨年の年末に友達の本屋さん、小林書店の小林由美子さんに紹介してもらいました。「経営本しか読まない私がためになる小説を薦めてください」と紹介していただいた本です。半年に1回出る続編が楽しみで楽しみで待ちきれないくらいです。

同業の呉服屋として読んでいるとちょっと普通とは違うところで感動していたりします。

 

呉服屋に生まれた私にとって撞木(しゅもく)は有って当たり前のもので、その意味も考えずに名前を鵜呑みにしていました。そして撞木に着物をかけて見せることもまた、当たり前のことです。

 

 

江戸中期までは反物(たんもの:仕立てる前の着物が棒に巻いてあるもの)は下に並べて見ていました。せいぜい肩から斜めにかけてみて見るくらいだったのでしょう。それを小説の中では主人公の「幸」がパッと見て着物を着たように見える工夫として宙に浮いたように見せる見せ方を考えて大成功させました。確かに下に置いて見ているのと立ててみるのとでは印象が全く違います。初めてそれを見た人たちは驚いたでしょうね。この見せ方で売れたのは容易に想像できます。

*  *  *  *  *

「上から吊るすんやのうて、下から支える、て考えたらどないだすやろ」

「(中略)あの撞木杖だす」

撞木とは、本来は金などを叩く丁字型の仏具のことだが、杖の形として用いられるようになって久しい」

あきない正傳 金と銀 六より

 

この杖に足をもう一本付けて安定させて反物が宙に浮いたように見せる工夫から「撞木」が広まったそうです。

撞木にかけてあった着物を着てみると実際の着姿が良く分かりますね。

 

そして今はさらに着物をビジュアルで見やすく、感じていただけるように「着装」しています。

着物体験は撞木のさらに進化系なのですね。

 

「あきない正傳 金と銀」の主人公「幸」と自分を重ね合わせながら、お客さまが喜んでいただける視点で全てのことを考えてやってみたいと勇気をもらっています。最近、小説って読んだことないなぁ、というあなたも是非読んでみてくださいね。面白くて面白くてきっとハマりますよ^^

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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