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華やかな関西、渋好みの関東は江戸時代からだった☆高田郁著、小説「あきない世傳 金と銀」に見る着物の好み3

着物

[あきない世傳 金と銀より]

「こころが動くとしたら、無地か縞かしら。江戸っ子好みの渋い着物の方が、帯で装う楽しさが増えるように思うわね」おかみさんたちの着物も、縞柄か無地がほとんどだったことを思い出す。

大坂では彩豊かで華やかな着物が望まれるのに比べて、江戸っ子が好むのは慎ましい色合いの縞だった。

大阪天満の呉服屋の7代目女将、幸が江戸に店を出したばかりの会話です。

 

東京の代表的な染めメーカー「竺仙(ちくせん)」さんの社員さんが来ていらっしゃる着物は江戸時代に武士の裃に着た江戸小紋、万筋と呼ばれる超細かい縞の着物です。遠くから見たら無地に見える柄、色も渋い茶色、沖縄の染め、紅型の帯で華やかさを出していらっしゃる着こなしです。

「江戸の粋」ともいうお手本となるようなコーディネートです。

 

 

今でも洋服も着物も関東と関西では好みが違います。

関西はいろんな色が使われ明るい色が好まれるのに対して、関東は黒やグレー、渋い色や無彩色が多いと感じています。

 

大分前に関東と関西の着物のコーディネートの違いをセミナーで受けたことがあります。

関西は緑が多く、建物も比較的木造が多いのに対して関東はコンクリート、石の文化で緑も少ない。

結果、人間の本能として関西は彩豊かになり関東は無彩色の黒、グレー、白が好まれるのだと言われました。

 

関西は商人の文化、江戸は職人の文化だったからとも書かれています。

 

 

「あきない世傳 金と銀」でもそのようなくだりが描かれています。

大坂から江戸へ移って驚いたことのひとつに、好まれる色の違い、というのがあった。華やかで明るい色を好む大坂。沈んだ色、落ち着いた地味な色が人気を集める江戸。おかみから贅沢を禁じる触れが幾度も出されているが、公方さまのお膝もとか否かで事情も異なるのだろう

 

今まで言われていたのは関西は華やかな公家文化、江戸は質実剛健な武士の文化だからだとされていました。

その土地での支配者が一般の庶民の憧れとなったり、影響が大きかったからでしょう。

 

いろいろな環境や習慣によって長年培われた「好み」は今も続いているように思います。

 

 

[あきない世傳 金と銀より]

「私たちが売り手として大事に思うことと、お客さまが書いてとして大事に思うことは、必ずしも同じではないのです。(中略)」

始末が重んじられる大坂、粋であることを信条とする江戸。そうした違いを理解した上で書いての気持ちを引き寄せることが、この街での商いでは必要なのではないか。

 

私も関西にいるときは華やかな着物を着ますが、東京や横浜へ行くときは無地っぽい着物にしたり、着物と帯を単色の濃淡でコーディネートしたりあまり色を入れずにすっきりとした組み合わせにしています。

 

着る場を考えるのも大切ですね!

今は洋服を着ている方にも見た目に好ましく思っていただける取り合わせを考えてアドバイスさせていただいています。

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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