DMをやめて「通信」を発行☆通信はお客様にメッセージを伝える武器です。

由紀子の日々

呉服屋の営業スタイルはお客様の家を訪問してコミュニケーションをとり、展示会に来て買っていただくのが一般的です。多分ほとんどの呉服屋さんは今もそうです。

 

しかし岐阜地区では地場産業の縫製が中国へ生産を移すと、今までミシン内職をして在宅だったお客様も外へ働きに行かれるようになり、急速に留守が増えました。会えなくてはコミュニケーションも取れません。ご案内もポストに入れるだけになっていました。

 

一方、社員は女性ばかりでしたが毎日車を運転してお客様のところを回り、展示会では着物の知識や着付けの技術など必要です。そのような万能な社員を要請するには10年はかかります。お客様が在宅の土日は休み難く、慢性的な社員の不足に陥っていました。

 

売上げは上がっていましたが、このような状態では未来はないのは明白でした。

 

 

私が4代目社長となってすぐから「外に出る営業活動をやめたい」「店頭にお客様の方から来ていただきたい」と思いました。コミュニケーションをとる方法が他にあれば、社員は店でお客様をお相手し、空いた時間で着物の知識や技術を磨くことに専念できます。それを実現できる方法を探して出会ったのが「失われた売り上げを探せ」という小阪裕司さんが書かれた本、ワクワク系マーケティング実践会でした。

 

DMによるご案内を「通信」という新聞に変え、お客様の都合の良い時間に読んでいただくことでコミュニケーションを取り、着物の知識や展示会のお知らせも盛り込みました。

 

通信を発行したことでその月から社員はお客様のところへ行かなくなりました。

いきなり「店頭の商売」に移行してしまったのです。

 

「新しいことは余力のあるうちにやれ」と教えられていましたのでいきなり飛びついてやってしまいました。

 

 

が、何の保証もないのにいきなり店頭に変わってしまったのです。以前のまま続けていれば売上げは伸びていたのに、とんでもないことをしてしまったのではないかと夜も眠れない日が続きました。

 

 

しかしお客様からは「面白いね~」「好きな時間に読めるからいいわ」「こんなのただでもらっていいの」と大好評で店へ話に来てくださる方が増えていきました。

 

心配していた売上げも全く落ちませんでした。

 

「こんなの作るの大変でしょう、毎月発行しているんですか?」とよく言われますが、

「お伝えする武器を持てた」と思いました。

 

ちゃんと書けば読んでくださって、私たちの思いに共感していただけた方がお店に来てくださいます。しばらくお会いしていなくても私たちのことはよく知っていてくださっていて、話が繋がってすぐに盛り上がります。

 

 

「出かけたついでに山本呉服店へ寄ろうか」と思っていただけるような小さなことをいろいろやりました。

 

毎月ちょっと珍しいお菓子を全国からお取り寄せしたり、お誕生日をお祝いしたり、「来てよかった」と思っていただけることを積み重ねていくことで店頭は賑わっていきました。

 

店はカフェのようにお茶をしに来た方が集まる場、笑い声と賑やかなお喋りの場になっていきました。

 

納品も集金も着物のメンテナンスもお客様が「店頭へ来れる機会」として認識していただけるようになりました。

 

つづく

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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