呉服屋の「鯨尺」と大工さんの「金尺」は☆きものがたり5

きもの豆知識

長さを測る「尺」には呉服屋が着物に使う「くじら尺」と大工さんが木を測る「金尺」があって同じ1尺でも長さが違います。

 

金尺:1尺   30.3cm

鯨尺:1尺   37.9cm

10分(ぶ)で1寸、10寸で1尺、10尺で1丈となります。

 

大工さんが使う金尺は90度に曲がっています(写真:宇野株式会社より)

 

金尺は金属の平板でL字型に作ってあるので「まがりがね」ともいいます。金尺の1尺2寸5分を鯨尺の1尺としたそうです。

鯨尺は最初に鯨のひげで物差しを作ったのでこう呼ばれています。

 

上が1メートルのものさし、下が2尺ものさし(約76センチ)です。

 

「メーターざし(メーターものさし)」に慣れている人にとっては1本が1メートルの感覚です。

「尺ざし(尺ものさし)」は1メートルより少し短いだけなのですが、2尺なのです。新入社員さんにとって、その感覚に慣れるには何ヶ月もかかります。

センチと尺を換算するのには計算機を使うのではなく、両方が付いているものさしを計算尺のように使っています。

 

 

竹で作られたものさしは軽くて使いやすいです。竹の節(黒っぽくなっている所)が1尺で見やすく作ってあります。

 

 

 

 

「そこの、ものさしを取ってくれ」小さい頃、父に言われてものさしを手に持って渡そうとしました。

「なんや、その渡し方は・・」と父の顔色が変わりました。

私が呆然としていると

「ものさしは畳の上へ置いて渡すもんや」意味がわからないままに、ものさしを下に置いて手を離しました。父は何事もなかったようにものさしを取って使い始めました。

 

その後も父がなぜ怒ったのか聞くことはなかったのですが、何十年もしてからその意味がわかりました。

ものさしは「物を刺す」に繋がり、手で持って相手に渡すことは「相手を刺す」ことの象徴だったのでしょう。

 

武士の時代の名残かもしれませんが、呉服屋ではそんな語呂合わせのような伝統も続いていました。

 

父はもう孫娘たちには怒りませんでした。それも時代の流れでしょうか。

 

 

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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