「炭と火消し壷」 昭和の冬の記憶☆「何でも断捨離」で良いのでしょうか?

品格の教科書

何年前からか、いび祭りには家の中庭でバーベキューをするのが恒例になっています。

子供歌舞伎の声や浄瑠璃、お囃子を聞きながら昼飲みするのは至福の時間です。

 

 

中庭でのバーベキューはこの時期、気持ちよくて最高です。食材を運ぶにもキッチンから近くて手間いらずです。ブロックを二つに網が一枚、炭をおこして入れればバーベキューの始まりです。

 

簡単バーベキュー装置

 

 

今はバーベキューだけに起こす炭ですが、昔は冬の唯一の暖房でした。

店の上がり框に一年中、火鉢が置いてありました。それを囲んで人が集まりました。

 

 

中に火がなくても手をかざす人も多く、習慣とは面白いなあと眺めていたものです。

 

 

石油ストーブが店に来るまでは、毎朝祖父が炭をおこすのが朝一番の日課でした。

火鉢には灰が入っていて、おこした炭を持ってきて入れました。

 

火起こしは下に穴があいています。持ち運びには灰が落ちないように台什能の上に乗せます。

 

早く起こしたい時は炭を立てると風が通ってどんどん火力が強くなります。

反対にお客様が少ない時間は炭を寝かせて灰をかぶせ、空気を遮断すると炭を長い時間保つことができました。

 

 

炭の上には五徳が置いてあって、鉄瓶でお湯が沸かしてありました。

蒸気が上がり始めると、シュンシュンと優しい音がしました。

 

火消し壷は入れておくだけで火が消えます。

 

店を閉める時にまだ炭が残っていると、消し壷を持ってきて炭を入れました。

空気が通わないので火は消えます。

消し壷で消した炭は、次の日に火を起こすには早く火が点いて最適でした。

 

 

 

石油ストーブ、ファンヒーター、エアコンと、次々と暖をとる道具が変わっていく中で、火消し壷は川のそばの段ボール置き場の下に何十年も忘れられたた存在でした。

 

「この火消し壷はしっかりしてるから捨てるなよ」祖父も父も言いました。

ほっこりした丸みや愛らしい佇まいが私も好きで残しておきました。

 

バーべキューの終わった後に真っ赤な炭を入れるとき、この家の暮らしをこの火消し壷がずっと見守ってきたような気がしました。

 

 

今は「断捨離」がブームです。

使わないものは捨ててしまえ、不要なものは置いておくスペースさえもったいない、というご時世です。

 

 

この火消し壷はもう手に入らないでしょう。

昔の職人さんたちが作ったものには深い味わいがあります。

年を重ねた重みは他のものでは変えられません。

 

 

「捨てなくてよかった~」

 

いつか役にたつかもしれない、

役に立たなくても

人生を共に過ごしてきた道具を慈しむのも自分を大切にすることなのではないかと思えるのです。

 

 

 

第45回 京裳苑

 

■ とき   6月4日(土)5日(日)6日(月)

■ 場所   京都・平安神宮前 みやこメッセ

■ 主催   (株)山本呉服店

 

*山本呉服店のお客様、特別ご招待の方のみとなります。

見てみたいと思われる方はお問合わせからメッセージを入れてください。

 

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「品格の教科書」は全国の書店さん、

またはアマゾンで手に入ります。

 

山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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