京都のおばあさんが教えてくれたお花の生け方1☆「品格の教科書」に載らなかった話2
お稽古の中で何が嫌いって、それはお花(華道)のお稽古でした。
今では花がない生活は潤いがなくて寂しくて、わざわざ野山の草木を採ってきます。
でも最初は「お花くらい生けられないと困るかも」と義務的に習い始めただけだったのです。
お茶(茶道)はおいしいお菓子が出てきます。京都ですから尚さら!
「今日はどんなお菓子だろう?」とお稽古に行くのが楽しみでした。
季節に合わせた美しい生菓子のテーマを想像するのも面白い。
そしてお稽古が終わったら無罪放免です。
それに比べて、お花はゴミが出ます。
茎を切ったり余分な葉を取ったり、その始末をしなくてはいけません。
おまけにお花は家へ持って帰らなくてはいけません。
荷物が増える〜〜、
持って帰ると生けなくてはいけません。
要するに私はお掃除が嫌いで、めんどくさがりなわけです。
もうお稽古はおしまいにしたいので、家に帰るととりあえずバケツに入れておきます。
毎日「生けなくちゃいけないなぁ」と思う罪悪感にさいなまれながら、見て見ぬ振りをしていると次のお稽古がやってきます。
おばあさんはお花が大好きで、2つの流派で師範の資格を持っていました。
いつも家中に7、8杯はいろいろな生け方でお花が溢れていました。
おばあさんの花は無駄がなくてキリッと「粋(すい)」なお花でした。
どこの花展を見に行ってもおばあさんのお花は最高!と思えるくらい素晴らしいものでした。
おばあさんが花を放っておく私を苦々しい思いで見ているのはひしひしと感じていました。
言われないことを幸に、私は毎回放っておくようになりました。
ある時、おばあさんは実力行使に出ました。
お花のお稽古に行く日、玄関には素晴らしい「お生花」が生けてありました。
「お生花」は花の向きや高さがきちっと決まっていて、最も難しい生け方のうちの1つです。
自然な生の花をその法則通りに生けることは上級者の技が必要です。
おばあさんでさえ2時間あまりもかかっていた大作でした。
素晴らしいお花に感動しながら稽古に出かけました。
ところがどうでしょう、家へ帰ったら玄関の花は全て抜き去ってありました。
昨日生けかえたばかりなのに…
続く
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