「大文字」の夜に思い出す「京都のお盆」
京都のお祭りや歳時記で一番好きなのは大文字です。
大文字は無縁仏も送る、お盆の「送り火」です。
東山の大文字に点火されると徐々に火の勢いが増し「大」の字が暗い山にゆらゆらと浮かび上がります。どこか懐かしい情緒があります。
市内を見渡す五山に次々と火が灯されます。
「大文字」が8:00、左回りに「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居」と5分ごとに点火されていきます。
一昨年は中止、昨年はかなり縮小されて実施されました。
「送り火」ですからね。
学生時代にいた親戚の家は「船形」のすぐそばでした。
火がパチパチと燃える音がすぐ近くに聞こえました。
私は「妙」がいちばん好きです。
美しい〜〜!
北の方の低い山に点火されるので、場所をしっかり選ばなければいけません。
親戚の家からは角度的に見えないので、いつも友達の家の近くへ見に行っていました。
賀茂川にかかる出雲路橋(北大路橋の一つ南)は昔は街路灯がなくて「妙」がビルの間からはっきりと見えました。(何年かぶりに行った出雲路橋には街路灯が点いていてがっかりしました。防犯上仕方ないですね)
字画の多い「妙法」は薪がたくさん必要なのですぐに消えてしまいます。
火の勢いが弱くなると北へ向けて歩きます。
北大路の端まで移動すると、金閣寺の裏山の「左大文字」が見えます。
何と言っても「妙」中心なので、鳥居は一度も見たことがありません。
右京区の花園の方にある「鳥居」を見ようとすると、よほど南の方へ行かねばいけません。
一度くらいは見たいと思うのですが、やはり「妙」の魅力には勝てません。
テレビ始め報道で「今日は『大文字焼き』でした」などと表現されると
「『大文字』はあるけど『大文字焼き』なんてありまへん」
おばあさんは聞くたびに激怒していました。
生粋の京都人には許せなかったのでしょう。
親戚の家では13日には「お精霊さん(おしょらいさん)」をお迎えしていました。
知恩院派のお寺の門徒だったので、毎日三食一汁三菜の精進料理を作ってお供えしなくてはいけません。
「お盆はほんまに大変やわ〜〜」
叔母はお精霊さんだけのために一汁三菜 、毎日三食ちゃんと精進料理を作って仏壇に供えていました。
家族のための食事は昆布と鰹だしで作っていたので、出汁からとらねばいけなかったのです。
ぼやきながらも毎年きっちりやっている叔母を尊敬していました。
私はキュウリやナスに割り箸をさして動物を作るくらいしかお手伝いできなかったので(笑)
大文字の送り火に送られて、お精霊さんは帰って行かれます。
すると「やれやれ、今年も終わったわ〜」と安堵のため息をついていました。
そんな叔母も今は施設へ入りました。
施設からはきっと「鳥居」が見えるハズです。
薪の燃える音を聞きながら、精進料理を作らなくてもいい生活も寂しいのではないか、
コロナで会うことも叶わない叔母を思い出しています。
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