「効率重視」と「手間をかけること」☆譲れないあり方

お見立て

「まだ浴衣まで裁断をしているの?」と何人もの同業者から揶揄(バカに?)されました。

ちょうど高度成長時代、展示会をやれば売れた頃。

裁断なんかに手間をかけてなんかいられない、

効率が悪い、

そんなことは仕立て屋さんに任せればいい

それが業界の普通になりました。

 

 

 

着物は基本的に、12メートル以上もある長ーい反物を着られる方のサイズに合わせて裁断して「オーダー仕立て」する物です。

 

今でもプレタ(洋服のように先に仕立てて売っている)なのは浴衣か丸洗いできる合繊の着物くらいです。

 

 

当店では祖父が全て裁断して仕立て屋さんに渡していたのを覚えています。父と母も、

そして今も、母と私が全て店で裁断しています。

 

 

なぜ店で裁断することにこだわるのか?

1、柄合わせによって全く別物になります。

 

柄が均等に散らばっていればいいというものではありません。

縫い目で柄を合わせるとキチンと感が出たり流れが美しくなったりします。

 

矢印の先が縫い目なのがわからないくらいです。脇も袖付も後ろ中心もすべてネコの柄が綺麗に並んでいます。

 

2、お客様の個性を活かした柄の配置ができる

 

サイズ表だけではお客さまにお似合いの柄合わせを実現することは難しいです。

着物選びの段階で当店のスタッフさんたちはその色や柄が顔の側に来たら美しいか、全体の配置はどうするかを見極めています。

それを実現できるのはお客様の顔を知っている私たちだけです。

 

横段の柄の反物です。

 

 

真横に合わせると大胆な着物になります。段々にずらすと流れが出ます。

 

3、着物は一点もの。裁断に失敗は許せない

 

浴衣(ある程度、同柄が染められているもの)でさえ、同じものは見つかりません。

着物は1点ものなのです。

 

裁ち損ないのリスクは仕立て屋さんには負えません。心配をかけたくはありません。

 

そのリスクは店で負います。

 

 

4、仕立ての時間を短縮できる

 

熟練した仕立て屋さんは貴重です。たくさんはありません。

当店で裁断することにより、仕立て屋さんは縫うことだけに専念していただけます。

 

 

そんな訳でいまだに「裁断は店で」それは譲れません。

効率とはまったくかけ離れた世界です(笑)

 

「わあ〜、思っていたより素敵に仕上がったわ!」のお客様のキラキラの笑顔が好きです。

 

 

 

「裁断」「柄合わせ」は当店のミッションとも言える事柄です。

時々そのようなブログの記事を書いているのでよろしかったらご覧ください。

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山本由紀子

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明治創業、岐阜の山本呉服店に生まれ着物に囲まれて育つ。大学時代を京都の親戚で過ごし金沢の呉服屋さんで勤め山本呉服店入社、代表取締役。雑誌商業界などで「売らず...

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